東京23区内でもともと住んでいた分譲マンション1室を賃貸している「ぼちぼち大家」の鴨庭ナランさんが入居者の入退去時に遭遇した不動産業界のコワイ話と、それにどう対応して200万円以上を守ったかをレポートします。連載3回目は、「家賃など賃貸条件の決め方」の話。
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連載2回目はこちら↓
家賃、定期借家 or 普通借家、ペット可にする?
こんにちは。
「ぼちぼち大家」の鴨庭ナランです。
現在、東京23区内の分譲マンション1室(2LDK)を自主管理で賃貸しております。
もともと住んでいた持家マンションの1室を貸し出しただけの超スモール大家さんです。
ぼちぼち大家デビューやこちらの連載をはじめることになった経緯はこちらをどうぞ。↓
今回は、私が実際に経験して感じた「家賃など賃貸条件の決め方」についてお話しします。
結論からいいますと、以下の通りです。
これらを知らずに、不動産業者のいうことを信じていたら、家賃だけでも少なくとも年間で100万円以上の差がつくことになったでしょう。その辺をくわしくお伝えしていこうと思います。
賃貸することになったら、借りてくれる人を募集するために、以下のような賃貸条件を決めます。
・賃料、敷金、礼金
・普通借家契約 or 定期借家契約
・ペット可 or 不可
今回は、ネットに出ている賃貸情報を見ながら、3社+1社に意見を聞きました。
提案は、各社まちまち。
それぞれの意図もほの見え、大変興味深く勉強になりました。
家賃提案…A社の場合
家賃についても、今回とても勉強になりました。
前回、初めて家を貸すときは、担当した不動産業者(A社)1社の提案をそのまま採用したのですが、数年経つうちに「相場よりも安く貸しているのでは?」という気がしていたのが正直なところでした。
ところが、入居者が退去するにあたって担当者からは言われたのは、
「これまでと同じ賃料での募集でよろしいですか?」。
退去は、2024年の1月末。
不動産の入退去シーズンまっただなか。
しかも、コロナ禍も明けで、賃上げや景気回復の気配が濃厚になってきた頃です。
私が不動産業者だったら、賃料の値上げを提案すると思うのですが、据え置きでの確認。
それまでの彼(A社)の仕事ぶりからも予想できたことなので、
「お家賃は上げて借り手がつくならそれに越したことはありません。相場はどのくらいでしょうか?」
とこちらの意志を伝えて質問。
しばらくして返信が来ました。
「家賃相場ですが、周辺で同じぐらいの広さ・築年数などで事例をお調べしましたところ、概ね一坪単価で11,500円~12,000円位です。235,000円が募集価格としてよろしいかと思われます」
調べてもらって出た募集価格は、それまでの家賃よりも25,000円高くなっていました。
こちらから値上げ提案や相場を聞かなければ、そのままいっていたのでしょうか。
不動産会社としても手数料がより多くとれるのに……。
「調べる手間が面倒」「安くして早く決まったほうがいい」ということなのか。
いずれにせよ、A社のような業者は大家にとってメリットはなさそうです。
家賃提案…B、C社の場合
これ以前に、B社とも電話のみですが軽い打ち合わせをしていました。
物件情報を伝えた段階での予想は、「実際に見てみないとなんとも言えないが、250,000円は固いのでは……」とのこと。
実際に現地を確認したあとの提案は、「280,000円前後で募集できるだろう」。
また、B社以前に、友人でもあったC社にも現地を確認して打ち合わせをしていましたが、こちらが出したのも、およそ同じ金額でした。
彼がざっと調べたところ、このマンションは今まで賃貸に出た記録がウチ以外ではないようです。
その時点では、近隣には似た条件(間取り・築年数)の物件がないとのこと。
だいたい同じグレードのマンションで、ここより狭いところと、広いところの募集を参考に中間をとると、そのくらいの金額になる、というのが根拠でした。
私自身、ホームズやアットホーム、スーモといったネット上のサイトで近隣の相場を見ていた印象では、20万円半ば〜後半というのが現実的な線かな、と感じました。
なので、B社の家賃設定を聞いた時点では、「ちょっと高めの290,000円ではじめて様子見できたらいいな」と考えていました。
地元不動産屋さん(D社)の提案
実は、B社の現地確認&打ち合わせの前日、もう1社からも聞き取りをしていました。
午前中の所用の帰り道、隣り駅前にあるT地区の不動産屋を通りかかりました。
T地区は、私鉄と地下鉄が隣り合っていてY地区(私のマンションの地区)よりも若干値段が高い地域。
駅前通りもスーパーのほか昔ながらの洋品店のほかお惣菜屋さんや行列のできるカレー屋さん、オシャレなスイーツ店や美味しい居酒屋など、賑わいの規模もワンランク上です。
「◯◯不動産」と看板がなければ、カフェかしら?と思うようなウッド調のオシャレなそのお店は、以前からちょっと気になっていました。
これまでお付き合いのある不動産業者は知り合いづてばかりで、地元の業者さんには相談したことはありません。地域の情報に詳しい業者さんにも話を聞いてみたいと思っていました。
店頭に張り出されている物件を見ていたところ、受付担当らしき若い女性に「お部屋をお探しですか?」と声をかけられました。
「いえ、実は、これから部屋を貸し出すので、この辺の相場はどのくらいかなぁ、と。あ、もうお願いしている不動産屋さんはいるんですが……」
と答えたところ、お時間よろしければと店内へと案内されました。
奥から出て来た担当者は、カジュアルな服装の30代くらいと思しき男性です。
余計な期待をさせては申し訳ないので、先に、
「もともとA社で管理委託で頼んでいたのですが、諸事情あり、今回はB社とC社、2社のお世話になることにしていて、一般媒介&自主管理で募集予定です。お話を聞くだけになっちゃうかもしれませんが……」
と告げたうえで、募集条件を検討中で家賃相場をリサーチしていたところだと伝えてみました。
すると、
「お時間は大丈夫ですか?」
とこちらの都合を聞いてから、わざわざ奥からノートPCを持って来て調べてくれたのです。
彼の提案は、
「310,000円(家賃295,000円+共益費15,000円)」でした。
根拠は以下の通りです。
●現在この近隣(T・Y両地区)ではファミリー向け物件が品薄
●それもあって最近はY地区もT地区並に家賃が上がっている
●60㎡以上の2LDK、駅から5分以内など好条件なレア物件
「もちろん、現地を確認していないので正確ではないけれど」という断りをつけながら、
「そちらのご近所に新築のマンションができるんですけどね、ファミリー向け賃貸物件で、まだ建設中で来月完成予定。でも、今の段階ですでに一棟全部満室なんですよ」
とY地区の需要があることを、近隣の新築賃貸物件の契約状況をふまえて教えてくれたうえで、
「そちらのお部屋はここより駅に近い。しかも、間取りは同じ2LDKですけど10平米くらい広いですよね。310,000円くらいでもじゅうぶん客づけできると思いますよ」
とアドバイスをしてくれたのです。
ふらりと飛び込み相談にきただけなのに、なんていい人なのかしら……と感激。
お礼を言って、何かあったら相談させてくださいと名刺もいただいて、店を後にしました。
C社・友人のGoサインで家賃決定
A社が出してきた20万円前半から、D社でまさかの30万円の大台を超える提案。
D社の提案にほくほくしていたものの、翌日、実際に現場を見たB社が出してきたのは28万前後。
・現地を確認ずみのB社(高級賃貸が得意)…280,000円
・現地は確認なしのD社(地元不動産業者)…310,000円
確かに、いくらファミリータイプが品薄とはいえ、ウチのマンションは築24年。
都心エリアの強みはありますが、築浅のファミリータイプは場所を変えればいくらでもあるでしょう。
290,000円くらいがいいところかしらん……と思っていました。
それで、B社の見解と、飛び込みで聞き込みをした地元業者D社の提案を、友人でもあるC社に報告したところ、
「D社の提案でいいと思う。310,000円でいこう」
とGoサイン。
その決断に少し驚きつつも、「問い合わせがこなければ下げればいいし」と家賃は決まったのでした。
「最近は定期借家が主流」ってホント?
家賃のほかにB社から聞かれた募集条件について、驚いたのは以下の言葉です。
「最近は、定期借家契約が多いです。家賃の見直しもしやすいですのでお勧めです」
賃貸契約は、2年ごとに更新する普通借家契約が一般的だと思っていました。
C社の友人にも聞いてみたところ、
「確かに以前よりは増えてきてる。でも、長く借りたい人から外されちゃうから普通でいいと思うけど」
との返事。
長く借りて欲しかったので、普通借家契約にしました。
その後、ネット上で賃貸の募集条件を見ましたが、どう見ても普通借家の方が多い。
何ゆえ「定期借家が主流」とB社は言ったのか。
高級賃貸業界がそうなのか(そんなこともないように思えますが)。
おそらく、定期借家にすることで、不動産業者としては定期的に媒介手数料が見込めるためではないでしょうか。
ファミリータイプは、ワンルームなど単身者向けの物件に比べて、居住年数も長くなる傾向にあるようです(初回の入居者さんは7年お住まいでした)。
また、ネットなどの情報によれば、定期借家の場合、期間が限られることもあり家賃が低く抑えられるケースが多いとのこと。
不動産業者にメリットはあっても、大家には手間や原状回復の費用もかかるうえに家賃も低くなり、デメリットのほうが多いと思います。
将来的に、「数年先、その部屋を自分(または家族)で利用しよう」ということになったら、そのときの募集ではじめて定期借家を検討すればよいな、と思いました。
ペット可にするか
友人であるC社と打ち合わせのときに、「ペットはどうする?」と聞かれ、特に考えずに、
「ペットはOKのマンションだよ」
と答えて「ペット可」での募集になりました。
その場合は、ペットによる部屋の傷や匂いなどに対応する(原状回復に費用が余分にかかる)ため、敷金を1ヶ月上乗せを条件に入れます。
友人曰く、「ペット可だったら、すぐ見つかると思う」とのこと。
実際に、問い合わせも多かったようです。
結果として、今回の入居者さんにペットはいませんでしたが、次回の募集では「ペット可」にするかどうかはわかりません。
というもの、クロス(壁紙)などは貼り替えれば良いですが、フリーリングや木製の建具などの傷の修復には費用がかかり、かけても元通りとまでは修復できません。
お行儀のよいペットばかりではないと思うので、次の入居時のことを考えると、客づけに困らない物件であれば「ペット不可」が無難かもしれません。
募集から2回目の週末の内見で申し込み
結果、D社の見込みはドンピシャだったようです。
募集をかけてすぐに問い合わせが入りはじめ(C社友人談)、2回目の週末に内見に来られたご家族から申し込みが入りました。
D社のリアルな状況分析と、背中を押してくれたC社の友人の判断力と決断力のおかげです(D社には後日、お菓子を持ってご挨拶に行きました)。
一般的に「不動産業者は客づけをよくするため、家賃の設定を低くする傾向にある」といわれています。
媒介手数料や委託管理手数料にも反映されるのだから、できるだけ高く契約することを目指すものかと私などは思うのですが、素人考えなのでしょうか。
もちろん、すべての業者がそうではなく、D社やC社のように顧客(大家)サイドにたった設定を勧めてくれる会社もあります。
そういった信頼できる会社に出会うためにも、
・複数社からの聞き取りをすること
・地元の不動産業者にリサーチすること
これらの2つは欠かせないと今回痛感しました。
もしも、A社に任せたまま、最初の提案の「いままでと同じ賃料での募集でよいですか?」で募集をかけていたら、
100,000円/月の差額(年間で120万円)
が生じていたことになります。
また、B社の「最近は、定期借家が主流ですよ」を鵜呑みにしていたら、
・2〜3年ごとに募集をかける手間
・そのたびにかかる原状回復費用
・低めの家賃設定
と、やはり大きなマイナスとなっていたことでしょう。
☑️ 業者は家賃「低め」提案ケース多数
☑️ 業者の「最近の主流は〜」は要確認(ガセあり)
☑️ 定期借家のデメリット(原状回復費・低家賃)を認識
次回は、新規入居者を迎え入れるための、原状回復リフォームについてお話しようと思います。
※今回の入退去における、いちばん驚愕し、勉強させられた出来事かもしれません。
文/鴨庭ナラン
東京23区内の分譲マンション(2LDK)1室を賃貸している「ぼちぼち大家」8年目(入居者は2世帯目)。毎年の確定申告は『超シンプルな青色申告、教えてもらいました!』の簡単仕訳帳を利用中。
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