東京23区内でもともと住んでいた分譲マンション1室を賃貸している「ぼちぼち大家」の鴨庭ナランさんが入居者の入退去時に遭遇した不動産業界のコワイ話と、それにどう対応して200万円以上を守ったかをレポートします。連載4回目は、「原状回復リフォーム業者の選び方」の話。
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連載3回目はこちら↓
不動産賃貸で抑えるべきは、原状回復リフォームのコスト
こんにちは。
「ぼちぼち大家」の鴨庭ナランです。
現在、東京23区内の分譲マンション1室(2LDK)を自主管理で賃貸しております。
もともと住んでいた持家マンションの1室を貸し出しただけの超スモール大家さんです。
ぼちぼち大家デビューやこちらの連載をはじめることになった経緯はこちらをどうぞ。↓
今回は、私が実際に経験して感じた「現状回復リフォーム業者の選び方」についてお話しします。
結論からいいますと、以下の通りです。
これらをせずに、一つのリフォーム業者の言う通りに工事を進めたとすると、最大で100万円以上の差(!)がつくはめになってていました(なんとか回避できました)。
これまで不動産業者のトラップを交わすのに神経を使っていたけれど、「リフォーム業者さん、あなたもなの?!」と驚きです。
どんな業界も涼しい顔をしながら、水面下で切った張ったが繰り広げられているのですね。
さて、原状回復リフォーム工事に登場するのは、計5社です。
今回も、大変興味深く勉強になりました。
退去代行って何? リフォームの監督権を取り戻す【a社】
原状回復リフォームで、最初に登場したのは、a社。
a社は、それまで管理をお願いしていたA社(不動産業者)の外注先です。
入居者の退去予定を知らされた時点で、A社には、
・今度の募集は一般媒介
・物件管理はお願いせず、はひとまず自主管理でやる
とお伝えしました(その辺の経緯は、連載2回「不動産業者の選び方、頼み方、つき合い方」をどうぞ)。
ちなみに、このあとA社からは、「実は、賃貸業のほうはやらなくなってしまったので、退去業務を完了したあとは、ウチは身を引きます……」と言う連絡がありました。
A社には、これまでお世話になった感謝を伝え、退去までの流れを確認したところ、
「入居者、私(A社)の他に、第三者的に判定をする業者の3者立会いで、退去確認。その上で原状回復リフォーム費用を、借主・貸主それぞれ精算します」
とのこと。
「公正に確認しますからご安心ください」といった風ですが、ちょっとよくわからなかったので、「その第三者的な業者というのは(前回リフォームを担当した)◯◯社さんですか?」と聞きました。
前回、10年以上住んでいた部屋を賃貸に出すにあたりリフォームをお願いしたのが◯◯社。ここは、A社系列の会社です。
このときは、A社を紹介した親の手配にまかせ、相見積もりをとることもなく進めました。
今回、当時の見積書を改めてみると、クロス代などの単価が割高でした(数年前に現在のマンションのリフォームをした際のものと比較して発覚)。募集時と同じようにA社に任せていたら、また割高になってしまいます。
A社の答えは、
「今回お願いするのは、◯◯社ではなくa社です。退去立会いなどを専門にしている業者です」
とのこと。
社名を確認し、このとき初めて退去代行業者というものがあることを知りました。
要は、A社の外注先です。単にA社がするべく「退去精算と現状回復リフォームの発注」をし、かつ受注もする業者ということ。
「自分で発注受注ができる仕組み」のどこが第三者的なのでしょうか。
そんなことをしれっと言ってくるA社にドキドキしながら、「やっぱりA社とのおつき合いはやめて正解だったかも……」という思いをより強くしました。
A社には、退去立会いの日時を確認し、
・a社さんで退去代行していただくのはかまわない
・こちらでも何社かリフォーム業者に見積もりを取る予定
・最終的には、相見積もりを見てこちらで選別したい
と伝えました(やりとりは残るようにメールでしました)。
その後、退去完了の連絡が入ったので、A社にa社の見積もりを促したところ、
「相見積もりを取るのであれば、a社はおりるそうですので、他社でお願いします」
と。見積もりの提出もしないとのこと。
さらに、A社からは「他社で見積もりを取るのであれば、精算はそちらで行ってください」といった旨のことを言われました。
相見積もりが取れて、精算もこちらで確認できるのなら、願ったり叶ったりです。
実は、A社との賃貸委託管理契約書の「委託業務」の条項には、以下の文言がありました。
1.甲は、乙に対し、本物件の賃貸社に関し、次の定める業務を委託し、乙はこれを受託する。
A社との賃貸管理委託契約書
…
(7)解約時における貸室の破損及び汚損の際に行う修復作業の発注・集金
…
2.甲は乙が本条におり受託した業務の一部または全部を乙が適当と認める第三者に再委託または譲渡することを認める。
契約では、「A社がa社に退去代行業務を委託することを認める」としているのです。
A社にこの契約書をたてに主張されたら面倒だな、と思っていたのですが、そうならずにホッとしました。
A社には、敷金精算の連絡や残地物の処理の確認など、元居住者さんとの仲介・交渉は最後まできちんとしてもらうことを確約し、リフォームの発注と精算はこちらですることになりました。
不要なリフォームに愕然…【b社、c社】
今回、募集でお世話になる不動社業者のB社、C社には依頼の段階で、
「原状回復リフォームについては相見積もりを取るつもりなので、よい業者がいたら紹介してほしい」
と伝えてありました。
その結果、B社紹介のb社と、C社紹介のc社に見積もりをお願いしました。
今回、私にとって初めての入居者の退去。
正直に言えば、「ずいぶん汚いまま出ていくのね」という印象でした。
クリーニングやリフォームが入るとはいえ、台所のグリルは油でベタベタなまま、浴室の排水溝のゴミ受けは髪の毛がそのまま残っています。
私自身、掃除は苦手なほうです。とはいえ、借り物に住んでいるとなると、話は別。
その昔、一人暮らしを初めてしたワンルームを退去したとき、ピカピカに掃除をした(お陰で敷金はほぼ返ってきました)記憶があった私には衝撃でした。
最低限の自分たちの汚れの痕跡は消したいものかと思っていたのですが、その辺の考え方や温度感は人それぞれなのだなぁ、という発見でした。
クリーニングやクロスの張り替えですむところはよいのですが、気になったのはバスルームです。
浴槽や棚に、サビのような汚れがかなり大胆についていました。
その部分を確認したb社、c社ともに、「これは落ちない」という見解でした。
お風呂は、1日の汚れを落としてリラックスしたい場所。
清潔感がもっとも求められるスペースではないでしょうか。
私だったら、いくら便利な場所でもお風呂が薄汚れている部屋はちょっと躊躇します。
各社とも、浴室については、クリーニングだけではなく、以下の提案をしてきました。
●b社・・・浴槽・エプロン・棚の交換 (37万円)
●c社・・・浴槽再生塗装、棚の交換 (20万円)
つまり、浴槽を新品にするか、塗装で汚れを隠すか。
塗装のほうが若干費用が安くなりますが、b社曰く、
「浴槽再生塗装は、ちょっとした衝撃でヒビ割れが生じるケースをよく聞く」
とのこと。友人でもあるC社(不動産業者)に聞くと、
「再生塗装はよくやるけど、別にクレームとか受けたことはない」
とそれを打ち消す答え。
全体としては、c社のほうが割安の価格だったため、友人の紹介ということもあり、c社でお願いしようとその時点では思っていました。
ためらわれたのは、浴槽の提案です。
先を見据えたら新品にするのに越したことはないけれど、金額は約2倍。
でも、費用を抑えた再生塗装にも不安が残る。
借主が汚した部分なので、敷金で借主負担で精算できそうですが、何か腑に落ちない部分もあり、決めかねて迷っていたのですが……、ふと、
「本当に落ちない汚れなのかしら…」
という疑問が浮かんできました。
いくら、前の入居者さんがワイルドなファミリーだったとはいえ、お風呂の浴槽って10年やそこらで入れ替えたり塗装し直したりするものだろうか、と。
そんなの聞いたことありません。
疑問をそのままにできない性分ゆえ、思い立ったところでスポンジとクレンザーを持参して物件へ。
浴室へ行き、試しにこすってみました。
Before↓
After↓
落ちました。
駅前のドラッグストアで買ったクリームクレンザーとキクロンで、みるみる落ちました。
浴槽以外に交換を提案された、プラスチックの棚についた汚れも以下のとおり。
↓
以前から、キクロンのスポンジとしてのコスパのよい高性能ぶりには感嘆しておりましたが、プロが落ちないと判断した汚れまで落とすとは。
これは、b社さんとc社さんにも教えてあげなくちゃ!
……って、そんなボケはいりませんよね。
プロが見て、落ちる汚れかどうか、わからないはずがありません。
私の素人丸出し感もいけなかったのかもしれません。
「え、この汚れ、落ちないんですか?」
「次の入居者さんのために、なるべくキレイな部屋にしたいです」
とオロオロする様子をみて、「これは、まるっと大きな提案しちゃってもいけるのでは?」と思ったのでしょうか。
いずれにせよ、b社、c社に対して不信感が芽生えました。
B社とC社の担当者に浴室の件をコーフン気味に伝えると、二人とも「そうなんですか」と薄い反応で、それにもショックを受けました。みんな不要なリフォームだとわかってたのか、と。
原状回復リフォームではあるあるネタなのだ、と腑に落ちました。
そんなわけで、相談がてら、地元の仲間に今回の件を相談したところ、以外な道が拓けることになりました。
地元のプロ(友人)に紹介してもらう【d社、e社】
私は地元のテニススクールに通っているのですが、そこでできた友人のなかで
・ご家族が賃貸物件のオーナーをしているDさん
・ご自身がインテリアデザイナー(ご主人が建築士)のEさん
という二人がいるのを思い出しました。
スクール以外でも、地元でコートをとってプレイするなど、テニスではよくご一緒するのですが、家のことや仕事のことなどは、お互い深く話したことはありません。なので、もし無礼な質問だったらスルーしてください、という前置きつきで、現状を伝え、
「よいリフォーム業者を知っていたら紹介してもらえませんか」
とダメ元で聞いたところ、二人とも快く、d社、e社を紹介してくれました。
先に結果からお伝えすると、d社で原状回復リフォームをお願いすることにしました。
Dさんのご家族は地元でビルのオーナーをしてらっしゃるそうで、「うちは居住用の賃貸じゃないからお役に立てるかわからないけど……」といいながら、おつき合いのある地元の会社を教えてくれました。
早速そこに電話をして、「Dさんのご紹介でお電話しているのですが…」と友人の名前を出したところ、電話口のスタッフさんの対応は、
「まぁ、Dさんの! うちも少し前までは居住用のスタッフがいたのですが、今いなくて……。でも、Dさんにはお世話になっているので、ちょっと社長に確認しますね」
と、とても丁寧。折り返し電話をいただき、d社を紹介してもらいました。
後から分かったのですが、d社は紹介してくれた会社の息子さんの会社のようでした。
紹介者のDさんにお礼をいうと、
「何でも言ってくださいって、言ってましたよ。気になるところがあったらやり直しもしますって」
と、なんとも柔軟なやさしい言葉。
b社、c社に足元をすくわれまくり弱った心に沁み入りました。
実際に、連絡をすると、2月という繁忙期でスケジュールが埋まっていたにもかかわらず、スタッフをやりくりして、現場確認の日をすぐに設定してくれました。
当日、現れたのは、20代とおぼしき若者二人。
一人は、白シャツ&紺パンツとラフながらも清潔感のある服装の営業担当。
もう一人は、作業着の現場担当風。
これまでの経緯を話しながら、リフォームやクリーニングの箇所を確認していきます。
私の説明に、現場担当風の彼が実際に手を動かして確認、洗面台のポップアップ式の排水栓の開閉がおかしい部分などは、その場でサクッと直してくれました(思わず「すごい!」と歓声)。
でも、そういえば、友人(C社)も、「このくらいなら俺でも直せるから大丈夫」と言っていたことも思い出しました。
ちなみに、b社では、この部分は以下のように見積もられていました。
ポップアップ調整 15,000円(税抜)
b社見積もり書
※調整ができない場合は、部品交換が必要になります。
その際は別途お見積書を提出いたします。
b社は、社長さんみずから来ていたので、現場のことはわからなかったのでしょうか。すでに不信感からうがった見方しかできず、どこまでも請求されそうでコワくなっています。
実は、浴室のほかにも、懸案の修繕箇所がありました。
クローゼットの折れ戸が破損していたのです。
これは、b社は見逃しており、c社が気づいてくれた部分。
c社では、クローゼットの丸ごと取り替えを提案・見積もりされていました。
費用は、91,000円(税別)となかなかの額です。
d社の若者二人は、クローゼットの状態を確認して、
「たぶん、僕たちでできると思います」
との返事。
ええ、本当に?! と嬉しさと不安がないまぜになりました。
結果はというと、完工日に確認したところ、直ってました。
請求金額は、「折れ戸開閉調整 5,000円(税別)」。
現地確認のあと出された見積もり書は、クロスの単価などもお手頃価格(4社中最安値)で「諸経費」などなし。
そのほか、こちらが心配になるほどとにかく対応が早い。
見積もりの修正なども、即日出してくる。
ものすごい熱心さと誠意を感じたので、迷わずd社に決めました。
e社はスケジュール的に現場確認までは至りませんでしたが、対応もよく、間取りや修繕箇所を伝えて見積もりを出してもらったところd社と同等に良心的な金額だったので、次回、ご相談の候補にしています。
d社のいいところばかりを書きましたが、仕上がりについては、「あらら?」なところもありました(この辺は別の回に書こうと思います)。
ただし、そうした部分へのフォローもよかった。
何より、余計な警戒心とか不信感を抱かずにいられて、心安く過ごすことができました。
お願いしてよかったですし、次回も相談したい良い業者さんに出会えたと思います。
「業界有力者の紹介」ならベスト
今回、見積もりに参加した
いちばん高かったb社の見積もり↓
実際にリフォームをお願いしたd社の請求書↓
1,453,100円(b社)➖ 405,273円(d社)🟰 1,047,827円
※正確には、b社には163,580円分(浴室乾燥機代)が入っており、d社には110,000円(同)が請求書には入っていません。理由は、機材の搬入が間に合わないことと、現状で使用可能だったため交換を見送ったため。同じ条件にすると、差額は937,827円となります。
ただし、b社の見積もりにはクローゼットの修理代は上がっていません。もし、b社が見積もりを上げていたらいくらになったのかは、興味深いところです。
※の事実を踏まえても、およそ100万円の差が出てくるわけです。
不動産を賃貸する際、原状回復リフォーム工事は大きな出費であり、業者によって料金が大きく違うということはお分かりいただけたでしょうか。
今でもときどき、
「借主負担で精算できそうなリフォームなんだから、浴槽、新しくしちゃえばよかったのに」
という私の中の悪魔なささやきが聞こえてくることもあります。
一方で、
「いやいや借主さんから原状回復として正当じゃないって言われたら結局こっちが払うんだし」
というビビりな性分の私が反論する声も聞こえてきます。
結局のところ、d社にお願いしたことによって、
借主に請求する原状回復費用は最小限にでき、
駆け引きや騙し合いにヒヤヒヤせずすみ、
金銭的にも精神的にもコスパがよかった
と小市民なぼちぼちフリーランス的には満足しています。
今回、私がよい業者(d社)に出会えたのは、友人であるDさんのお陰がいちばん大きいでしょう。
Dさんはそれまで周りに話しませんでしたが、親御さんが所有しているのは大きな街道沿いに建つ駅近の立派なビルでした。当然テナントは満室です。
Dさんの親御さんが「先方にとって有力な取引先」で、その紹介だったからこそ、私という小さな客にもきちんと対応してくれた部分が大きいと思います。
もちろん、d社がクライアントの利益を優先する良心的な業者である可能性や、d社の担当者がもともとやる気にあふれた誠実な若者だったことも否めません。
ただ、ビジネスの現場では、状況次第、相手次第で対応が変わることはよくあること。
それらを念頭におきつつ、相手に委ねすぎず、お互いが損をしない取引ができると良いなと思います。
いずれにせよ、タイムリーなありがたいご縁でした。
☑️ 退去代行業者に要注意(相見積もり必須)
☑️ 原状回復工事の発注先を管理会社に委ねない(契約書を確認)
☑️ 不要なリフォームは業界あるあると知る(注意して確認)
☑️ 素人感まるだしに要注意
次回は、「媒介料? AD? 業者に支払うお金」についてお話ししようと思います。
ここでも、業者との攻防があり勉強になりました。
文/鴨庭ナラン
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