東京23区内でもともと住んでいた分譲マンション1室を賃貸している「ぼちぼち大家」の鴨庭ナランさん。入居者の入退去時に遭遇した不動産業界のコワイ話と、それにどう対応して200万円以上を守ったかをレポートします。連載5回目は、「業者に払う媒介料や広告料(AD)」の話。
*本サイトは、amazonアソシエイトに参加しています。紹介している商品・サービス等の外部リンクにはアフィリエイト広告が含まれる場合があります。
連載4回目はこちら↓
不動産業者に払う手数料はいくらが正解?
こんにちは。
「ぼちぼち大家」の鴨庭ナランです。
現在、東京23区内の分譲マンション1室(2LDK)を自主管理で賃貸しております。
もともと住んでいた持家マンションの1室を貸し出しただけの超スモール大家さんです。
ぼちぼち大家デビューやこちらの連載をはじめることになった経緯はこちらをどうぞ。↓
今回は、私が実際に経験して感じた「業者に払う媒介料、広告料(AD)の適正価格」についてお話しします。
結論からいいますと、以下の通りです。
できれば余分なお金は払わずにすませたい大家(私)と、少しでも多く取りたい業者とのせめぎ合いが今回もありました。
結果としては、初めて部屋を貸したときよりも、0.5か月(+消費税)少ない金額での取引に落ち着きました。
「仲介手数料の上限は法律で決まってる」って知ってた?
不動産の仲介手数料については、「宅地建物取引業法」という法律で定められ(第46条第2項)、法律の条文に基づいて、国土交通省告示(建設省告示第1552号第四)で具体的な報酬額の上限が定められています。
国土交通省告示(建設省告示第1552号第四)
- 賃貸借の媒介に関しては、依頼者の双方から受けることのできる報酬上限額は、賃料1か月分の1.1倍に相当する金額以内とする。
- 居住用建物の賃貸借媒介の場合、依頼者の一方から受けることのできる報酬額は、依頼者の承諾を得ている場合を除き、賃料1か月分の0.55倍に相当する金額以内とする。
わかりやすく言うと、賃貸契約に関する仲介手数料は、入居者と大家が不動産業者に支払うのは「それぞれ0.5カ月分+消費税が上限」です。
仲介手数料のリアル、裁判で手数料返還の事例も
ここで入居者さんや大家さんの中には、「え、仲介手数料って1か月じゃないの?!」と思った人も多いのでは?
結論から言うと、大家さんと入居者さんの両方から1か月分(計2か月分)をとっている不動産業者はたくさんいるようです。また、仲介手数料以外の名目でもプラスで乗せてくることも多々あります。
業界の慣例のようになっているのでしょう。
実際、私も初めての賃貸借媒介契約(A社)では、1か月分+消費税を支払いました。
今回取引をしたB社は、手数料(こちらの名目はのちほど)として下記を請求してきました。
・借主 家賃1か月分+消費税
・貸主 家賃1か月分+消費税、その他(※)
幸い、私は友人(C社)から法定金額を聞いていたことや、その他の依頼していない料金を断ったので0.5か月+消費税の支払いとなりました。
でも、知らなければ、業者に言われるまま1か月分以上、支払っていたかもしれません。
「でも、法律で決まってるなら、それ以上取ったら違法なのでは?」
と思ったあなた。するどいです。
実際に、裁判になって1か月分の仲介手数料は違法であるとして、業者にたいし取りすぎた0.5カ月分の返還を命じる判決が出たケースもあります(朝日新聞デジタル「1カ月分は取りすぎ 賃貸の仲介手数料、業者に返還命令」2019年11月13日)。
違法か、そうでないかの決め手となるのは、「依頼者の承諾を得ている」かどうか。
居住用建物の賃貸借媒介の場合、依頼者の一方から受けることのできる報酬額は、依頼者の承諾を得ている場合を除き、賃料1か月分の0.55倍に相当する金額以内とする。
国土交通省告示(建設省告示第1552号第四)
「仲介依頼の成立までに依頼者(借主or貸主)の承諾があれば、仲介業者は1か月分をもらってもよい」のです。
ですから、不動産業者に物件を探しに(あるいは入居者募集の依頼に)行き、「仲介(媒介)依頼書」や「賃貸借申込書」などを書いたときに、「承諾」すると、借主も貸主も0.5か月分以上を請求されても違法にはなりません。
申込書はここをチェック☑️
だいたいこんな感じで、申込書の枠外に書かれています。
以下は、B社が借主と交わした「媒介依頼書兼賃貸借申込書」。
枠外(右下)の拡大図。↓
これらの書面に署名捺印している場合は、「仲介(媒介)手数料として1か月分(別途消費税)を払います」と「承諾」していることになります。
私は貸す側ですが、今回成約となったB社と交わした「賃貸住宅媒介契約書」には仲介手数料の明記がありませんでした。
ただし、複写式になっていた「管理委託申込書」には、運営管理委託料の項目に「入居者への業務開始時」に「月額賃料の100%相当額」と書かれていました。
※以下は、B社から貸主(私)が受け取った(返送しなかった)管理委託申込書。
つまり、B社は貸主・借主から合わせて2か月分を実質の仲介手数料として請求するつもりだったようです。
連載2回目の「不動産業者の選び方、頼み方、つき合い方」に書いた通り、私は「媒介のみでもいいですか?」と確認していたので、管理委託申込書は返送せず(契約せず)。
特別な承諾は何もしていません。
借主から1か月分受け取るのであれば、「依頼者の双方から受けることのできる報酬上限額は、賃料1か月分」ですから、私が承諾しなければ、法律上は私は仲介手数料は支払わなくていいということになるのでしょう。
ちなみに、借主に向けて「仲介手数料0円!」を売りに募集している不動産屋さんもあります。
なかなか借り手つかない地域などでは、借主に優位な条件で募集し、家主(貸主)がその分(1か月分)を負担するケースも多いようです。
広告料(AD)って何? 払わなければいけないの?
家主(貸主)の場合、仲介手数料以外に、広告料(AD)というものを請求されることもよくあります。
物件を募集する際に作る、間取り図や近隣のお店や施設などの写真を載せた広告の製作料などでしょうか。
本来、こうした広告作業は仲介(媒介)に含まれているもの。
ですから、支払う必要はない料金です。
これも不動産業界の慣習のようです。
ただし、仲介業者が不動産広告料を請求しても違法ではないケースもあります。
例えば、借り手のつきにくい地域や物件などで、依頼主の依頼により、通常の広告のほかに新聞の折り込みチラシなど「特別な広告活動」を実施した場合です。
まとめると以下の場合は、広告料(AD)の請求も違法ではありません。
逆に言えば、上記以外は、法律上は支払う必要のない費用です。
「入居者対応補助業務委託料」なるものを請求される
今回、賃貸契約の取引を担当したB社とは、特別な承諾も、特別な広告の依頼もぜずに進みました。
入居者が決まり、最終的にB社から送られてきたものがこちらです。
「入居者対応補助業務委託契約書」の名目で、内容は入居者の物件へ入居案内とアフターケア(4か月)。
それで、家賃1か月分+消費税の実質手数料の請求でした。
入居案内は、こちらで設備器具の説明ファイルや、管理規約のコピー他、必要なものは準備していましたし、立会いと説明もするつもりでした。
なので、率直に以下のようにお伝え&確認しました。
「入居時の案内はこちらでやりますよ」
「業務委託はお願いしてないと思うのですが…」
「仲介手数料って、0.5か月分でしたよね?」
「それに入居者さんから1か月分とってますよね?」
電話とメールでのやりとりのうえ、結果として0.5か月分のお支払いで決着しました。
やりとりの過程では、先方とこちらの想定が違っていたことが、とてもよくわかり勉強になりました。
B社担当者のいうことが「ウチは広告料は1か月頂いてます」「広告料はもらえません」など二転三転する場面などもありましたが(機会があれば、この辺も書こうと思います)、先方も都心では有名な業者さんです。
最終的には、妥当な金額で決着できて、ほっとしました。
まとめ
今回、私がB社に支払ったのは「業務委託手数料」という名目で家賃の0.5か月分(家賃の50%)です。
※「0.5か月分でしたら、お支払いすることはできます」とお伝えしたところ、上記の名目にしてほしいというB社の依頼があり、名目はこだわらなかったので、そのようにしました。
もし、B社に言われるままにハンコをついて契約していたら、下記の料金となっていました。
・運営管理委託料 家賃の100%/入居時
家賃の5%/毎月
・契約更新料 家賃の50%/2年毎
こちらが納得して依頼をしているのであれば、管理委託料も更新料も支払うのは当然です。
でも、納得も依頼もしていないのであれば、支払いを断って当然だと思います。
☑️ 仲介手数料を家賃0.5か月分より多く「承諾なく」請求されていないか(契約書に注意)
☑️ 広告料(AD)を請求されていないか(「特別な広告」以外は不要)
☑️ 「◯◯業務委託料」などを請求されていないか(媒介に含まれる)
次回は、更新料のやりとりについてもお話しようと思います。
文/鴨庭ナラン
東京23区内の分譲マンション(2LDK)1室を賃貸している「ぼちぼち大家」8年目(入居者は2世帯目)。毎年の不動産所得の確定申告は、『超シンプルな青色申告、教えてもらいました!』の簡単仕訳帳を利用中。
コメント